園長からのメッセージ

みんな好き

 「好き」の感情に出会うときが、いちばんうれしい瞬間です。
 心がうきうきして、いろいろなことにかかわりたくなります。するとまた新しい「好き」との出会いがまっています。ひとやできごとにかかわることはとても大切なことです。そこからいろいろな感情や知恵を学びます。「好き」の感情は生きる原動力なのです。
 「好き」の感情をもったとき、ひとは無防備になります。でもそれは心の窓を開け、受け入れる態勢ができたということです。
 だから「子育てとは、子どもの好きの世界を広げるお手伝い」だと考えています。

やさしさがやさしさを育てる

 感情はひとにとって最も基本的な要素のひとつですが、これはおとなが教えればいいというものではありません。おとなのもつ感情が子どもの心に映し出され定着したものが、子どもの感情になっていくものです。具体的に言えば、言葉で「やさしさ」の大切さを伝えることよりも、子ども自身が「やさしさ」の経験するほうが人格形成につながるということです。
 子どもは驚くほど敏感に心の動きを感じ取る能力を持っています。いくら言葉で飾ってみても、すぐに相手の心の状態を見抜いてしまいます。だから子どもに接するときのおとなの感情は大切なのです。
 やさしさを育てるのはやさしさの感情で、憎しみを育てるのは憎しみの感情です。怒りも悲しみも接するおとなから子どもの心に映し出されます。そう考えてみると、子どもの育ちに必要なものは、豊かな感情を十分経験させてあげることではないでしょうか。

心の育ち

 今までの幼児教育は善悪の規範を教え込んだり、いろいろな力を身につけさせることに重点を置いた「一方向的に教える」行為だったのだと思います。しかし本来、乳幼児期の発達を考えるとき、教え諭すことだけではなく、双方向的で相互主体性をもった働きに支えられた「主体的に学ぶ」という要素を大事にしなければなりません。その学びの始まりには「心の育ち」が不可欠なのです。 子どもの思いに向き合うことが育てるということです。
 子どもの思いを受け止めることを繰り返して、初めて子どもは心の存在を知ります。そして共感という相手の思いを同じように想像し同調する能力も学んでいきます。その蓄積が自分を肯定する「心の満足」につながっていくのです。